建築家であり、家具や照明、暮らしの道具も手がける中村好文さん。
kanata art shopでは、2006年から中村さんがデザインした家具や照明、暮らしの道具をご紹介してきました。
このインタビューは、2005年に札幌で開催した「建築家の流儀」展から11年を経た2016年、叶多プランニングで開催の「好文堂」展に先立って行ったものです。
建築や家具のこと、北海道のこと、旅や本、これからやってみたいことまで。
10の質問に答えていただきました。
10年を経た今、あらためて読んでみても、中村さんのものづくりや暮らしへの眼差しが伝わってきます。
あ、もう、11年も経ったんですね。早いなあ。
思えば全速力で駆け抜けた11年間でした。日本全国を走り回り、海外にも頻繁に出掛け、11冊の本を出版し、国内だけでなく、韓国、中国、カナダ、アメリカでも講演会を開き、来場者数万人という大がかりな展覧会を2度ほど開催し、生涯の友と巡り会い、美味しいものを食べ、大酒を飲み、大笑いし、大声で歌って、ときどき泣きました。
「見どころ」は、この11年間で「変わったこと」と「変わらなかったこと」でしょうか?…といっても深い意味はなく、ただ「変わった」小物や雑貨を出品し、「変わらなかった」家具を展示する予定です。
「好文堂」展ですから展覧会には違いありませんが、「好文堂」は家具や雑貨を扱うお店ですから、お店らしい雰囲気にしたいと思っています。本気で「お店屋さんごっこ」をしてみたいのです。開店記念に「福袋」も用意しようか?… などという愉しい趣向も検討中です。
これまでぼくは職人仲間と二人三脚で家具を作ってきましたが、昨年、ひょんなことから福岡県吉井町にある「杉工場」という家具工場と知り合いました。今、その杉工場で鋭意試作している竹の座板と背板のダイニングチェアや桧の収納家具(引出し付きの箪笥=チェストです)などの新作を展示する予定です。また、皆川明さんと協働でデザインし、東神楽町の匠工芸で製作してもらっている家具なども展示したいと考えています。
札幌の友人から「あずましい」とか「あずましくない」という言葉を教えてもらいましたが、北海道の街も村も、そこに暮らす人々も、穏やかで、寛容で、温かくて「あずましいなあ」というのがぼくの印象です。もし、北海道で生まれ育っていたら、ぼくも「こんな風」ではなく、もっと「あずましい人」になっていたかも知れません。
気がつけば古希は目前(なんと!今年68歳になります)。ぼくのような呑気者でも、これから新しい住宅が何軒設計できるか?これから新しい家具がいくつデザインできるか?ふと、立ち止まって考えることがあります。で、「これからは、悔いのないよう、自分のしたいことだけをしよう!」としみじみ呟いたら、周囲からいっせいに「してきたじゃな〜い!」という声が高らかに上がりました。不徳のいたすところでございます。
昔からイタリア好きであちらこちらよく旅してきましたが、近年はすっかりヴェネツィアに夢中です。
ヘミングウェイは自分の写真に「ヴェネトに魅せられた老人」と書きましたが、ぼくもまたヴェネツィアに魅せられた老人です。昨年の初夏から夏にかけては「人生の夏休み」などとキザなことを言って、2ヶ月ほどリアルト市場の傍らに小さなアパートを借りてヴェネツィア暮らしを楽しみました。
街歩き、運河逍遥、地元の食材を使って料理をし、量り売りのワインを飲んで昏々と昼寝、合間、合間に仕事をするという夢の日々。すっかり味を占めて、今年も初夏には里帰り(?)しようかと…画策中です。
やっぱり、あれですね。ほら、だからそれなんです。
わかりやすく言えば、それのあれです。
ね?わかるでしょう?
今、TOTO出版から出版する3冊目の建築本の編集作業中です。ほかには「住宅読本」の続編にあたる「家具読本」を筑摩書店から、変わったところでは事務所のまかないランチや台所をテーマにした本をPHP出版から出版する予定。ま、遅滞なく原稿が書けたら…の話ですけどね。
※書籍についての内容は、2016年のインタビュー当時のものです。
「今、やってみたい」というより昔からやってみたいことに映画の仕事がありました。なかでも一番やってみたいのは映画美術の仕事。編集者から作家になった友人の松家仁之さんが「沈むフランシス」という北海道を舞台にした素敵な小説を書いていますが、もしそれが映画化されたら、だれがなんといっても美術を担当させてもらおうと鼻息荒く意気込んでいます。
映画関係者の皆さん、どうぞ、ヨ・ロ・シ・ク。
たいした役割を与えられてはいませんが、肩肘張らなくても、背伸びしなくても、立身出世を目指さなくても(つまり、新国立競技場の設計者になったりなんかしなくても)、建築を愛する気持、家具を愛する気持、もっと言えば日々の暮らしや人を愛する気持さえあれば、そこそこ愉しく人生を送ることができるものだ…ということを、実例として年の若い人たちに見てもらうことでしょうか。
PROFILE中村 好文
1948年千葉県生まれ。建築家。
1972年武蔵野美術大学建築学科卒業。建築設計事務所勤務を経て、東京都立品川職業訓練校木工科で家具製作を学ぶ。1976年から1980年まで吉村順三設計事務所に勤務し、1981年に「レミングハウス」を設立。
住宅設計を中心に、家具や照明、暮らしの道具まで幅広く手がける。
1987年「三谷さんの家」で第1回吉岡賞、1993年「一連の住宅作品」で第18回吉田五十八賞特別賞を受賞。
1999年から2017年まで日本大学生産工学部で教鞭をとり、現在は多摩美術大学客員教授。
主な建築作品に「三谷さんの家」「museum as it is」「伊丹十三記念館」など。著書に『住宅巡礼』『住宅読本』『意中の建築』『中村好文 普通の住宅、普通の別荘』『百戦錬磨の台所』など多数。
Interview|2016年
「好文堂」展開催に際して
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